

2004.12 月刊・食品工場長
オゾンによる食品工場の衛生管理
ソフトとハードの両面が必要な食品工場の衛生管理
泥付きの野菜や無菌にできない材料が搬入され、たくさんのパートさんが働く食品工場は、高い精度の衛生管理を要求される製薬会社などよりもよほど難しい管理が必要になる。パートさんでも自然に対応できる衛生管理システム(ソフト)と、生産設備や工場設備(ハード)の両面を、より効率的に制御し、かつコストミニマイズでより高い衛生管理を志すには、ほかの工場のシステムをそのまま移植しただけではやはり難しく、自前技術の蓄積が必要になる。
工場の衛生管理区域設定とその遵守が基本
外部から食材などが入庫し、種々の菌の侵入が予想される非管理区域、洗浄などにより除菌・消毒を行った食材を調理する管理区域、無菌に近い高い菌管理を必要とする重管理区域などを分離し、それぞれの出入口で手洗いの励行や、着衣や履物の取り換えを設定し、これを厳格に履行することが管理の基本になる。各区域間は壁で区切り、清掃しやすい壁材を選択し、入り口にはエアシャワーを設置して、有機物の侵入を防ぐ。頻繁に別区域に移動せざるを得ない動線を設定すると、面倒さから手抜きも多くなるので、人の動線検討も必要になる。管理区域の建物内に簡易ブースやトンネル施設をつくり、できるだけ重要管理区域への人の出入りを少なくする施設設計が望ましい。管理区域は小さければ小さいほど目も行き届くし、清掃・消毒の手間も少なくなる。
オゾンガス、オゾン水の利用でシステムの簡素化を
通常、管理区域への入室の手洗いには、石鹸、逆性石鹸、アルコールなどの殺菌剤の噴霧など、複数の工程を設定する。これはそれぞれ消毒剤に耐性菌があるからで、面倒な作業となる。オゾンは強い酸化力で菌の細胞を破壊して殺菌するため耐性菌をつくる心配がない。ほかの殺菌剤と組み合わせる必要もない。水道水の強い水流で菌を洗い流す効果は広く知られているが、オゾン水は、同様の感覚でかつ強い殺菌作用をもっている。手荒れも、数種類の殺菌剤を併用するよりも少なくて済む。オゾンガスは殺菌剤であるだけに、人体、とくに呼吸器系には障害を与えるので十分な管理のもとで使用する必要があるが、数ppm程度までのオゾン水であれば安全性は高い。

オゾンシステムの模式図
空調系や材料系からの菌の侵入を防ぐ
近年、カット野菜工場などでは、オゾン水の蛇口と、天井から微量のオゾンガスを噴霧するシステムが広く採用されている(模式図参照)。空中浮遊菌の除菌は、作業者に影響のない濃度のオゾンガスを天井から間欠的に噴霧することで行える。夜間などに無人の時間帯があれば、より高濃度のオゾンを噴霧することで、より強い除菌効果を期待できる。オゾン水で野菜や材料を洗浄することによって、付着菌の減少を図れることはすでに周知の事実である。床や作業テーブル、包丁、まな板などをつねにオゾン水で洗浄しておけば、付着菌の減少ができるし、埃と一緒に菌が浮遊することも防げる。オゾン水の効果は水に含まれるオゾン水濃度に比例するのだが、見た目にはオゾン水濃度は分からないので、必要水量、同時に使用する蛇口数量、洗浄対象物などを専門メーカーと打合せしてから仕様を決める必要がある。給気や空調ダクトに付着する汚れから発生する菌が、工場内に入り込む可能性も考慮する必要がある。ダクト内に定期的にオゾンを流し、衛生管理を行うこともできる。ダクト用亜鉛メッキ鋼板は、二〇〇ppmオゾンガスの酸化腐食に耐えるが、切断面などメッキがなくなっている部位の処理には注意が必要である。工場内の細菌検査を定期的に行い、増殖の傾向があれば早めに手を打つ必要がある。原材料からは、芽胞形成する耐薬品性の強い菌が入り込む可能性もある。

写真1 大型の調理排気脱臭システム
調理排気の脱臭
食品工場では、調理排気が近所からの悪臭クレームの対象となることがある。悪臭防止法は二二項目の特定悪臭物質に限らず、規制地域ではすべての臭気について(いいにおいであっても)規制の対象になる。水ミストとオゾンによる排気脱臭器は、とくに油煙や油分を含んだ臭気の脱臭に効果を発揮している。大型の食品工場排気にも施工実績があり、活性炭方式よりも低コストで設置可能である(写真1)。

写真2 VAN車両の荷台内、前妻に取り付けたオゾン脱臭器
菌の増殖を防ぐ
工場内と受け取り側の衛生管理を確立しても、輸送途中の温度管理や菌管理に手を抜けば「頭隠して尻隠さず」になりかねない。輸送車両の荷台内を、オゾン水やオゾンガスで清潔に保つことは難しいことではない。同時に、オゾンで脱臭を行うことにより、前の荷物のにおいが次の荷物に付着するのを防ぐこともできる。当社の実施例では、削り節の輸送後に、充填前のビールの空き缶を運ぶ車に取り付けた例で、成果を挙げている(写真2)。
食品工場では、原材料の入庫から消費者の口に入るまでのトータルな菌管理が必要である。製品によっては、完全無菌の製品がつくれないことも多いだけに、日頃からの菌管理と、決められた手順を確実に守る教育が重要になってくる。





